株価を決める要因

仕手とデイトレーダーと個人投資家が株式相場に与える影響

仕手とデイトレーダーが株式相場に与える影響

株で230億円稼いだという個人投資家cisさんが本を出されましたけど、そのタイトルがなんと「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」です。

ネットで株の取引をすることはもう新しいことでもありませんが、誰でも自宅から簡単に株トレードが出来るようになって以来、cisさんやBNFさんのような「バケモノ個人投資家」が何人も誕生するようになりました。

彼らのような、個人であっても巨額のマネーを動かす投資家が株式市場に与える影響は小さくはないでしょうし、また、影響力を持つ複数の個人トレーダーが集まって「投機目的で意図的に相場を作り出す」、小さな「仕手集団」も存在します。

ちなみに、少し話はそれますが、僕が株よりFXを短期トレードに選んだ理由は、仕手筋やファンドのような相場を操縦する人たちによって、自分のチャート理論を邪魔されずにトレードをしたかったからです。
FXであれば市場が巨大すぎて、一部の人間の思惑では操作できませんから。

「仕手」「仕手戦」って何だろう

投機目的で意図的に相場を作り出す人がいる

株式市場には、昔から投機目的で意図的に相場を作り出す人たちが存在します。
僕も株の短期トレードをしていた頃は、監視している銘柄リストの中に「仕手関連銘柄」というページを作って、不穏な動きがないか常時監視していました。

例えば、ルック、兼松日産農林、日成ビルド、宮地鉄工所、丸山製作所…。まぁ、他にも「仕手株」はいっぱいあります。

株価操縦の手口

「仕手」とは大口の投資家や相場師のことをいいます。
かつては、「伝説の相場師」といわれる人が株価を動かしていました。
証券会社が顧客に推奨銘柄を買わせることで、相場を作った時代もありました。

法規制によって、現在はこうしたグループの活動は終息したかに見えますが、株価を不法に動かそうとする人たちは今も存在しています。

「買い方」の手口は、浮動株(市場に流通している株)の少ない銘柄を探し出し、仲間などと少しづつ買い集めます。
他人に悟られないよう安値で買い集め、次第にわずかな売りものしか市場に流通しなくなり、売り株が枯渇したところで、「仕手筋が集めている」「必ず上がる」などの好材料の情報を流します。
好材料に興味をもった投資家が買いを入れ、浮動株がわずかになった株価は一気に上昇します。
これを「提灯をつける」といいます。

「誰かが買えば上がる」「上がるから買う」「買うから上がる」の繰り返しで、株価はさらに暴騰します。
ある程度まで株価が上がりきると、仕手筋はいよいよ保有していた安値で買った大量の株を売り始めます。
彼らが高値で株を売り抜けたあとは、株価は急落し、やがて元の水準まで値を下げていきます。

急騰していた株価がそれ以上上がらなくなると、今度はそれに乗じて「売り方」がカラ売りを始めます。
彼らの狙いは、高く売って安く買い戻すことです。
株価を下げるために、どんどん売るのです。

「買い方」と「売り方」による攻防戦

仕手には株を安く買って高く売る「買い方(強気筋)」と、カラ売り(信用取引で株を売ること)での儲けを狙う「売り方(弱気筋)」が存在します。
双方の攻防戦を「仕手戦」といいます。

自らの意図した方向に株価を動かそうと、それぞれの陣営が大量の買い注文と売り注文をぶつけ合います。
出来高が急増し、双方の買いと売りで株価は乱高下しますが、決着がつくのは、どちらかの資金が尽きたときです。

ネット時代のプチ仕手戦

証券取引所は、仕手戦を封じるためにさまざまな規制を設けています。
しかし、ネットを通じて根も葉もない怪しげな情報は増えるばかりです。

おもしろがって、「提灯をつける」個人投資家も少なくなく、プチ仕手戦があちこちで行われています。
あっという間に4~5倍になるのが仕手戦ですから、興味を惹かれるのは当然かもしれません。

しかし、仕手戦が終わると、あっという間に元の株価に戻るので注意が必要です。



毎日売買するデイトレーダーの影響は?

毎日売買するデイトレーダーの影響は?

冒頭でも紹介したcisさんの著書「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」のタイトルのように、毎日売り買いを繰り返す個人投資家の存在もあなどれません。

彼ら「株式市場のインフルエンサー」たちが動かす巨額の資金はもちろんのこと、ツイッターなどのSNSを通して発言する言葉にも相場に影響を与えるチカラを持っています。

デイトレーダーは宵越しの株は持たない!?

株式投資の手法を機関で分けると、

  1. 長期投資
  2. スイングトレード
  3. デイトレード

になります。
長期投資の期間は、半年~1年、2~5年、5年以上など諸説あります。
スイングトレードも同じで、2~3日、1週間、1~2ヶ月などあります。
デイトレードだけは定義が明確で、購入と売却を同じ1日のうちに完了する取引をいいます。
「日計り」(ひばかり)ともいいます。

「江戸っ子は宵越しの銭を持たない」といいますが、デイトレーダーは宵越しの株(オーバーナイト)を恐れるところが共通点です。

デイトレーダーが増えたのは、ネット取引の普及と、1999年の売買自由化がきっかけです。
取引コストが低下したことで、薄い利ザヤを積み重ねていく投資法が可能になりました。

ライブドア事件で痛手を負ったトレーダー

古い話ですが、新興市場の株価が急上昇した2004~5年には、「株で○億円作った」「月給分を株で稼ぐ」といった本が多く出版され、BNFさんのようなスター的存在のデイトレーダーが生まれました。
トイレで携帯電話を操作する「トイレーダー」という言葉も生まれましたね。

デイトレーダーといっても、ほとんどが普通のサラリーマンですが、なかには株で食べていける自信がつき、専業の投資家になった人もいます。

ライブドア事件後の新興市場の暴落で、デイトレーダーを含めた多くの投資家が痛手を負いました。
なかには数千万円の借金を負った人もいるようです。
どんな状況下でも儲け続けられるのは、特殊な才能の持ち主だけのようです。

個人投資家の存在感が大きくなってきた

個人投資家の存在感が大きくなってきた

インターネットと、ネット証券が提供するトレーディングツールの高性能化で、今や自宅でトレードする個人投資家も、証券会社のディーリングルームで働くプロトレーダーと遜色ない環境で株の売買ができるようになりました。

スキャルピングと呼ばれるような、数秒から数分といった「超短期」で売買を繰り返す彼らの手法は、株の値動きのクセにも影響を与えていることでしょう。

投資家ごとに株へのニーズは異なる

東京市場を動かしているのは、外国人投資家といわれています。
取引高に占める割合は約6割です。
「外国人投資家が買い越した」というニュースは、株価の見通しが明るい意味に受け取られます。

ひとくちに、「外国人投資家」といっても、欧米の年金基金などの長期投資家や、ファンドのような短期の利ザヤ稼ぎまで、さまざまなタイプが存在します。
最近、存在感を増しているのは中国政府系ファンドです。
中国の民間企業による日本企業のM&Aも増えています。

日本の投資家のなかでも最も大きな資金を動かしているのは、生命保険会社や信託銀行、年金基金などの「機関投資家」です。
多くの人から預かったお金を運用しているのが特徴です。

なかでも独特の動きを見せるのが投資信託、いわゆる「投信マネー」です。
数千億円の資金を集める大型投資信託は、株式市場に大きな影響を与えます。

ネットが個人投資家を変えた

サラリーマンや家庭の主婦もネット取引の普及もあり、当たり前のように株式投資をする時代になりました。
証券取引所での個人投資家の割合は約2割です(2012年、東京証券取引所)。
「個人投資家に元気がないと、市場が盛り上がらない」とさえいわれるようになりました。

とはいえ、家計における株式の保有割合は8%程度です(2012年、日本銀行)。
米国の株式保有割合が高いのに比べると、さびしい数字です。
「貯蓄から投資へ」というのは、時代の流れです。
個人投資家はこれから増えていくことでしょう。


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