株価が動く仕組み

自社株買いと増資で株価はどうなる?

一株あたりの利益は自社株買いで上昇、増資で減少

昔は証券取引法で禁止されていた「自社株買い」ですが、今やすっかり株主の利益に資する施策と好意的に受け止められています。

自社株買いで、市場に流通する株数が減れば、当然1株当たりの利益は上昇することから、

自社株買い = 株高

という図式が成り立つわけです。

一方、自社株買いが1株当たりの利益を高めるのとは逆に、新たに株を発行する「増資」は1株当たりの利益を下げることになるので、株価を押し下げることに繋がります。

自社株買いは、株主価値を高める行動として投資家から歓迎されやすい

自社株買いは、株主価値を高める行動として投資家から歓迎されやすい

企業が自社の株式を買い集めることを、「自社株買い」といいます。
株価操作やインサイダー取引につながりかねないため、長い間、証券取引法(現金融商品取引法)で禁じられてきました。

ところが、2001年に解禁され、株価対策として自社株買いを行う企業が増えてきています。

自社株買いされた株は「金庫株」として企業自ら保有するほか、「消却」することもできます。
「消却」すれば、買い集めた分だけ株式数は減少します。

株式数が減少すれば、1株当たりの株主の権利が大きくなるのは当然のことです。
「1株当たり利益」(EPS)が上昇するほか、PER、PBR、は低下するため、株価に割安感(株の価値が上がる)がでてきます。
配当原資が変わらなければ、1株当たりの配当が増えることも期待できます。

自社株買いには「株主利益を考える企業」というイメージがあり、多くの投資家から買い材料として受け止められています。

株主総会を経て取得株総数と価格が公表される

自社株買いは、企業の重要な資本政策のひとつです。
企業の手元にある余裕資金の使い道には、

  1. 設備投資をする
  2. 配当を増やす
  3. 借入金を返す
  4. 自社株買いを行う

などがあります。
どれを選ぶかは、経営姿勢が表れる部分でもあります。

自社株買いは、企業による発表前に株主総会の議決を経て実施されます。
発表されるのは、取得株総数の上限と取得価格の総額です。
実際にどの程度の株式がいくらで買われたのかも、随時公表されます。



増資で1株当たり利益が減少する

増資で1株当たり利益が減少する

自社株買いが株主に歓迎されるのとは反対に、嫌がられるのが「増資」です。
企業が設備投資などの目的で、新たに株式を発行して資金を調達すると、発行済み株式数が増えることから株式に価値が希薄化しやすくなるからです。

増資で新たな資金を集める

新規事業の立ち上げなどで資金が必要になったときは、

  1. 銀行から融資を受ける
  2. 社債を発行して投資家から資金を借りる
  3. 増資を行ってマーケットから調達する

などの方法があります。
「増資」とは、新たな株券を発行して投資家に買ってもらう資金調達法のことで、

  1. 広く購入希望者を募る「公募増資」
  2. 一定の投資家に対象を絞った「割当増資」

の2つがあります。
さらに割当増資には、株主が対象の「株主割当増資」と、それ以外が対象の「第三者割当増資」の2つがあります。

株式に転換できる権利がセットされた「新株予約権付社債」も、増資の一種です。

株数の増加で株価は下がりやすい

いずれの方法でも、増資により株数が増えることは同じです。
利益が変わらず株数だけが増えるのですから、1株当たり利益(EPS)は減少します。

また、1株当たり利益(EPS)を使って計算するPERは高くなるため、株価は割高になります。
「増資によって希薄化した」という状態です。
増資は明らかな悪材料として受け止められ、株価が下がるケースがほとんどです。

M&Aを阻止する手段としても使われる

2005年にライブドアに買収を仕掛けられたニッポン放送は、フジテレビを対象に「第三者割当増資」を行いました。
しかし、他の株主の権利を害するとして、ライブドアは提訴しました(このケースでは取り消しが認められました)。

その後も、ブルドックソースが全株主対象の第三者割当増資で買収を阻止したケースがあります。


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