株価が動く仕組み

M&A(企業の合併・買収)で株価は乱高下する

企業の合併・買収で株価は乱高下する

いまやM&Aは市場の大きなテーマのひとつとなっています。
基本的にはM&Aは、「企業の将来に向けた前向きな投資活動」だと投資家からは判断され、株価上昇の要因となります。

しかし、例えば2018年の武田製薬のシャイアー買収のように、7兆円というあまりに巨額な買収額に、財務状況の悪化を心配する投資家からの売り注文で、M&A発表後に株価が下がるケースも見られます。

M&Aで収益性が高くなり株価は上がりやすい

企業のM&A(合併・買収)は、いまや市場における最大のテーマです。
マイクロソフトによるノキアの携帯事業の買収やソフトバンクによる米国第3位の携帯電話会社スプリントの買収は、業界地図を一変させる力を持っています。

M&Aが成功すれば、シェアの拡大は間違いありません。
共同仕入れなどでコストが下がれば利益率が高くなるため、株価も上昇するでしょう。

規模や収益性に差がある2社の合併だと、合併後の株価は収益性の高い企業に近くなるケースがほとんどです。
業界再編の「台風の目」となるような会社の株を先回りして買っておくと、大きな収益を得られる可能性があります。

TOBで株価は乱高下する

経営陣の意に添わない買収が進められると、株価は間違いなく上昇します。
買収する側はより多くの株を集めるために、買収される側は相手に株を買わせないために、株を買い集めるからです。

そんな動きに便乗する投資家も少なくありません。
まとめて株を買っておき、高値で引き取らせることで収益をあげる投資ファンドも存在します。

TOB(株式公開買付け。Take Over Bidの略。)も、買い材料です。
TOB価格は、投資家に応じてもらうため時価よりも高く設定されるのが一般的です。
思うように株を買い集められないときは、価格の引き上げを行ったり、別の企業がより高い価格でTOBを仕掛けたりします。
投資家側は、そんな展開を期待して売り渋ることもあります。
経営交渉の進展状況にも株価は敏感に反応します。

BNFさんの名前もちらほら、大量保有報告書で誰が大株主なのかがわかる

大量保有報告書で誰が大きな株主なのかわかる

筆頭株主や大株主の存在を知らせる「5%ルール」は、秘密裏に標的とした企業の株を買い集めたりするケースが増えてきたことから制定されたものですが、「四季報」などでその会社の大株主の名前を眺めていくのも面白いものです。

かつて、株で160万円を210億円にまで増やしたBNFさんの名前がいくつかの企業の大株主として記載されていたり、「あれ、今はこの人がこの会社の筆頭株主なのか」といったマニアックな楽しみ方もできます。

ちなみに、すっかり表には登場しなくなったBNFさんですが、僕が業界人からチラッと聞いた噂では、2017年時点ですでに株で得た資産が1000億円を超えたそうです。

5%を超える株主は一般に知らされる

気になる会社の株主がどんな人なのかは、投資家として知りたい情報のひとつです。
「会社四季報」(東洋経済新報社)などには筆頭株主をはじめ、主な株主の名前が記載されています。

金融商品取引法では、発行株式数の5%を超える株を取得した時点で、金融庁への報告と開示を義務付けています。
5%を超える大株主の情報は、「大量保有報告書」を見ればわかります。
これを「5%ルール」といいます。

かつて投資ファンドが所有する株は規制が緩く、3ヶ月ごとに報告する仕組みでした。
しかし、2005年の村上ファンドやライブドアによる強引なM&Aをきっかけに、5日以内の報告に変更されました。
現在では買収の進展具合が常に把握できるようになっています。

EDINETで大量保有株主がチェックできる

スティール・パートナーズなど著名な投資ファンドの名前が大量保有報告書に上がってきたら、注意が必要です。
投資ファンドが株を買い集める以上、何らかの目論見があることは間違いありません。

「M&Aを仕掛けるのでは?」と考える投資家が増えるだけで、株価は上昇します。
事実、スティール・パートナーズが大量保有している銘柄は「スティール銘柄」といわれ、ウォッチされています。

大量保有報告書は一般に公開されていて、誰でも見ることができます。
霞ヶ関にある関東財務局証券閲覧室を訪ねるほか、金融庁のホームページ内の「EDINET」にアクセスするだけでも、常に最新情報がチェックできます。



株の買い占めや株式交換の仕組み

株の買い占めや株式交換の仕組み

企業や投資ファンドがある会社の株を買い占める目的は、経営権の取得と投機の2種類があります。

企業に株を買い取ってもらうグリーンメーラー

株式会社の最高意思決定機関である株主総会では、「1株=1票」で議決が行われます。過半数の株を握れば、経営権を手にすることができます。

内部留保として多額の現金を持つ企業に対して、配当金アップの要求が出される、もはや珍しい話ではありません。
2008年にはアデランスの筆頭株主となった投資ファンドのスティールパートナーズの要求で経営陣が解任されるという事件が起こっています。
政治の世界では「1人=1票」が基本ですが、企業統治の世界では「1株=1票」となります。
お金さえあれば、簡単に企業を手に入れることができます。

また、買い占めた株を高値で買い取ってもらうことを狙って株を買い占めるケースもあります。そんな投資家を「グリーンメーラー」といいます。

MBOを利用した上場廃止が増えている

経営権取得のために株を買い集めるには、TOB(公開買付け)が使われます。
TOBを実施するには、期間や買い取り価格、買い取る株数について新聞に広告を出さなければなりません。
TOBに応じるか、応じないかは、株主次第です。
個人投資家を含めたすべての株主に、平等に選択の機会が与えられるのがメリットです。

一方、経営陣によるTOBは、MBO(Management Buy Out)といわれます。
経営陣が自社の株式を買い占めることで市場に流通している株をなくし、上場廃止をするのが目的です。
2012年にはベビー用品のコンビや出版社の幻冬舎などがMBOを使って市場から退出していきました。

合併で株式交換が行われる

そんな手法をとるにしても、株を買い集めるには巨額の資金が必要です。
銀行から融資を受けたり、社債を発行して資金を調達するほかに、自社株を相手企業の株を交換する方法もあります。

自社株が1000円、相手企業の株が500円なら、相手企業の株2株につき、自社株1株を渡します。
自社の株価は高いほど、有利に他社株を買うことができます。
株式交換は、企業合併にも使わるれる手法です。

2007年5月には、親会社の株との交換で買収を行う「三角合併」が解禁されました。

外国企業による三角合併では、日本企業A社を合併するために日本籍の子会社を設立します。
A社と子会社が合併する形をとりますが、買収の対価は親会社(外国企業)の株式で支払うことができます。

三角合併の第一号として、米シティグループによる日興コーディアルグループの買収事例がありました。


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