金融商品取引法とは、従来の「証券取引法」に代わって公正な金融取引を目指す新しい法律です。
ファイナンシャルプランナーの業務の中でも、金融商品取引法の特に「消費者保護」の部分について説明する機会が多々あります。
ただ、法律に関することを説明するのは、正確さが大切な一方、難しくなってはいけないという、すごくやっかいなものでもあります。
ここでは、なるべく簡潔に分かりやすく、重要なポイントに絞ってお話ししていきたいと思います。
証券取引法から金融商品取引法へ
2007年9月、証券取引に関する法律が「証券取引法」から「金融商品取引法」に変わりました。
正確にいえば、従来の「証券取引法」「金融先物取引法」など金融商品ごとに定められていた法律をひとつにまとめ、すべての金融商品を対象とする新しい法律へと生まれ変わったものです。
株取引に関していえば、証券取引法の一部改正と見ていいでしょう。
金融商品取引法
金融商品取引法は、複雑かつ多様化するさまざまな金融商品を包括的に取り扱うことで、投資家保護を目的に定められた法律です。
金融商品取引業者に対して、顧客の知識や経験、財産状況に応じた説明をしなければならないという「適合性の原則」や、勧誘の要請をしていない顧客に対して勧誘をしてはいけないという「不招請勧誘の禁止」などが定められています。
金融商品取引業者は、内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。
インサイダー取引の規制が強化された
金融商品取引法の大きなテーマとなっているのが、「開示制度」です。
いわゆる「5%ルール」では、取得した株数が総発行株数の5%を超えた時点で「大量保有報告書」の提出が義務づけされています。
かつての法律では、投資ファンドは5%ルールの適用外となっており、人知れず株を買い集めることが可能でした。
しかし、金融商品取引法では、すべての投資家に最大でも5営業日以内の提出が義務付けられています。
また、総発行株数の3分の1以上を取得するには、TOB(公開買付け)によることも義務づけられました。
事前に内部情報を知ったうえで株を購入・売却する「インサイダー取引」についても、罰則が強化されました。
企業買収のように株価を動かす可能性のある事実を知ったうえで株を売買した場合、たとえパートやアルバイトであっても、インサイダー取引として罰せられます。
M&Aが始まれば株価の急騰は必須で、濡れ手に粟の大儲けが待っています。
不正を許さず、公正な市場を作ることは、金融商品取引法の目的です。
さらに、購入の意思がないにも関わらず大量の注文を入れる「見せ玉」に対する罰則も強化されました。
見せ玉の目的は、大量の注文を入れることで一般投資家の買い意欲(売り意欲)を誘うことです。
株価操作につながるとして以前から刑事罰の対象でしたが、新たに追徴金が課せられるようになりました。
より手厚くなった投資家の保護
個人投資家に関係してくるのは「広告規制」です。
これまでの広告では、大きな文字でリターンを強調し、リスクに関する説明は小さな文字で書かれるのが一般的でした。
金融商品取引法では、リスクとリターンは同等の扱いで紹介しなければなりません。
「手数料が必要」「途中解約では元本割れを起こす」といったリスクを知らせたうえで販売することが義務づけられました。
法整備が整った以上、これからは「知らなかった」ではすまされません。
これまで以上に、投資に関する自己責任が問われる時代になったといえます。
その他の金融商品・資産運用に関する法律など
「金融商品販売法」は、金融商品を販売する業者に対して、「消費者契約法」は、消費者保護の観点から個人に対して適用されます。
金融商品販売法
金融商品販売法は、多様化している金融商品の取引におけるトラブルから消費者を保護するための法律で、金融商品に係る契約に適用され、個人及びプロを除く事業者が保護の対象となります。
商品のリスクについてなど、重要事項の説明義務を果たさないことで、顧客が損失を被った場合、業者は損害賠償責任を負うことになります。
なお、この際は元本欠損額が損害額と推定されます。
消費者契約法
消費者契約法は、消費者と事業者の間の契約全般に適用され、消費者の保護を目的とした法律です。
対象となる消費者は個人のみとなります。
事業者の行為により、消費者が誤認、困惑したうえで契約を締結した場合に、契約を取り消すことができると定められています。
なお、金融商品販売法と消費者契約法は、要件に当てはまれば同時に適用と受けることができます。
投資者保護基金
投資者保護基金は、証券会社が破綻した際に、顧客から預かった資産を確実に返還できるように作られた制度です。
本来、証券会社は顧客の資産を分割管理するため、破綻しても顧客の資産には影響がないのですが、この分割管理が不十分だった場合に備えて設けられており、1人あたり1000万円を上限に補償されます。
なお、FXの証拠金は投資者保護基金の対象外となっています。