株式投資をしていると、自分では「経営状態の良い、しかも割安な株を仕込めた」と思っても、景気や国際情勢といった大きな流れによって引っ張られてしまうことが多々あります。
個人的な経験で言うと、半年ほどかけてコツコツと優良銘柄を仕込んでいったことがありました。
ある程度の株数になって、「あとはじっくり様子をみよう」と数年後を楽しみにしていたら、突如「ギリシャ問題」という話題が湧いて来て、世界の株式市場が軒並み急落したんです!
もちろん、僕がコツコツ仕込んでおいた株はすべて「大打撃」を受けました…。
先のことなど、しかも日本やアメリカではなく、ギリシャで起こる問題を予想することは不可能に近いことですが、株の世界とはそういう「予想不可能なこと」に満ち溢れているということを、これから株式投資を始めようと考えている方に知っておいてもらいたいと思います。
ちなみに、貯金をはたいてコツコツ仕込んでいった株が暴落すると、相当な精神的ダメージを負います…。
景気サイクルで主役となる銘柄は変わってくる
バブルが崩壊して以降に社会に出た人たち(僕もそのひとりですが)にとっては、「景気が上向く」という感覚が今ひとつわかりづらいものです。でも、そんな中でも小泉政権時代やアベノミクスなど「やや上向き」の時代は確かにありました。
金融相場と業績相場
人生に好不調があるように、景気も好況と不況を繰り返します。
不況となるとモノが売れなくなり、企業の業績は悪化します。
リストラが増え、失業率が上昇し、世の中全体が暗い雰囲気に包まれます。
そんな事態を打破するために、日本銀行は金利を引き下げる「金融緩和」を行います。
金利が低くなると、気軽に借金ができるようになります。
1%で借りたお金を5%で運用できれば、大儲けできます。
そんな資金が株式市場に流れ込み、株価は上昇します。
低い金利に支えられて株価が上昇する時期を「金融相場」といいます。
業績不振にもかかわらず、株価が上昇するのが特徴です。
なかでも銀行など金利上昇がプラスに働く銘柄が集中的に買われます。
企業の業績が回復してくる頃には金融相場は終わり「業績相場」が始まります。
ここで買われるのは、好業績をあげている企業の株です。
業績による選別が難しくなる時期です。
景気がピークアウトすると…
景気の過熱を抑えるために、日本銀行は少しづつ金利を上げていきます。
そうなると投資家の資金が株式市場から預金や債券に流れ、市場全体が下落していきます。
このような「逆金融相場」では、高金利の影響を受けにくい無借金企業も注目を集めます。
金利が下落すると、業績の悪い株が売られる「逆業績相場」に突入します。
この時期に評価を受けるのは、リストラに取り組む企業です。
世の中の不況感が漂い始めると、日本銀行は金融緩和を実行し、再び「金融相場」の幕があがります。
株価は景気を先取りする先行指数
1990年以前、とりわけ1986年から1990年頃は日本の株式市場は大盛況でした。
この時代は資金の調達がスムーズで、拡大路線をとる企業が多く、就職活動もすぐに内定がもらえる時代で、雇用が安定しているうえに、株で儲けた人が続出したので、車や住宅、高級品もよく売れ、世の中は好景気の真っ只中でした。
株価が上がれば、「今のうちに買っておかなければ」という心理が人々に働き、株式市場にマネーが流れます。
企業はその資金を元に、さらなる事業拡大、人材の確保へ、というプラスの流れが生まれ、1989年12月には、日経平均株価は終値で38915円の史上最高値を付けます。
しかし、その後のバブル崩壊とともに、日経平均株価は38000円台の最高値から7000円台まで下がり、景気は大きく後退します。
複合不況といわれ、2003年の就職氷河期の深刻さはマスコミでも度々伝えられました。
雇用不安や株安で消費にも節約志向が強まり、その結果、経済は収縮、さらなる不況へとつながるデフレスパイラルに陥ります。
アメリカ発の金融危機が世界的に伝播した、いわゆるリーマンショックのあった2008年以降、厳しさはさらに増しました。
このように株価が上がるときは、それを追うように世の中は好況になり、株価が下がるときには、景気も後退していきます。
好景気とは市場に流れるマネーが豊富に循環している状態です。
人々の心理が、先々の経済状態にポジティブな見通しを持っているならば、マネーの流れが滞ることはなく、株価は上昇していきます。
しかし、ひとたび景気に不安を感じ始めると、マネーの流れは一気に収縮に向かい株価を押し下げます。
株式市場は、この人々の心理による影響が、経済の実態に先行して最も顕著に現れることから、景気の先行指数としての役割も果たしているのです。
国際情勢と株価の関係
冒頭で例に挙げた「ギリシャ問題」にしてもそうですが、経済的にそれほど大きくない国の財政問題が、これほど世界経済に影響を与えているのは、世界のマーケットが「一体化」していて、もはや一国の問題として片付けられないからです。
当然、地政学リスクや各国の要人発言といったニュースに、世界のマーケットは敏感に反応することとなります。
グローバル化した株式市場では、戦争や国際会議などのニュースに敏感に反応する
2007年8月には、米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付きがきっかけとなり、世界中の株価が暴落しました。
経済がグローバル化したことで、投資家の安全志向が高まり、リスクのある株式から一斉に資金が流出しました。
同年2月には、上海証券取引所の暴落がきっかけで、「世界同時株安」が起こっています。
いまや株の世界は、国境を超えた運命共同体であるといえます。
地政学リスクと暴落の関係
株式市場の歴史を遡ると、戦争やテロが暴落を引き起こしています。
1990年の湾岸戦争、2001年の同時多発テロなど、戦乱のたびに株は売られ、金など安全な資産が買われました。
戦争や国際関係の緊張がもたらすリスクを「地政学リスク」といいます。
紛争の火種が現実化したとき、株式市場は敏感に反応します。
戦争への不安から、消費マインドが落ち、企業業績が悪化する可能性があるからです。
首相の交代と株式市場の関係は?
首相が交代した直後の株式市場は、経済界が新政権を試す場となります。
株価が上昇すれば期待度大で、下落すれば不安視しているというわけです。
「改革が進むのか」「税制はどう変わるのか」「景気対策は」・・・、企業を後押しする政権と判断されれば、投資家は積極的に買いを入れてきます。
最近では、内閣も株式市場の反応を気にしている様子です。
政治と経済は密接な関係があるので、日本経済を後押しする政策を期待したいところです。