株式分割というのは、1株を2株にするとか、1株を10株にするとかして、株の数を増やすことです。
でも、株数は増えても会社の価値が変わるわけではないので、株数を増やした分、例えば、
- 1株を2株に分割すると:株価は2分の1に
- 1株を10株に分割すると:株価は10分の1に
なると理論上は考えられます。
どうして「理論上」と断るのかというと、株式分割した場合に、必ずしも理論上の株価になるとは限らないからです。
以前は、株式分割をするとおおむね株価は上昇する傾向にありました。
理由は、今まで高くて手が届かなかった株が、分割されたことで「買える値段」まで下がり、投資家の売買が活発になるからでした。
また企業側は、それを見越して株式分割を繰り返すケースも多く見られました。
ところが、最近は「株式分割=株価上昇」とはならないことが増えてきています。
なぜかというと、東京証券取引所が投資をより身近なものにするために「単元株数(最低取引単位)」を下げる施作を実施しているからです。
そのために、ホリエモンが昔ライブドアでやったような「株式分割を繰り返して株価を上げる」といった錬金術は使えなくなってきています。
株式分割で株数が増えるけど、会社の価値は変わらない
「株式分割」とは、すでに発行されている株式を分割して株数を増やすことです。
分割割合は企業が決めることができ、1株を2株に分割することを「1対2分割」、1株を10株に分割することを「1対10分割」といいます。
株数が増えたからといって、会社の利益が増えるわけではありません。
1株が2株に分割されれば、1株当たりの利益は2分の1に下落します。
株価は2分の1になると考えるのが妥当でしょう。
投資資金100万円を超えるような「値がさ株」の場合、株価水準を下げる目的で株式分割を行うことがあります。
株価が手頃になることで、投資家の裾野が広がり、株価が上昇することが期待できるからです。
株式分割バブルとは?
「株式分割バブル」といわれた2004年には、株式分割するたびに株価が急騰するケースが目立ちました。
その典型例がライブドアです。
1対100」といった極端な株式分割を繰り返しました。
当時は、株式分割を行ってから新株が流通するまで1か月ほどかかりました。
その間、品不足になることで株価が急騰するのは自然なことです。
ライブドアは、株価が急騰している時期を狙って増資を行い、大量の資金を集めていったのです。
現在では、株式分割の翌日から新株の流通が始まるよう改正されたため、株式分割で株価が急騰することはありません。
また、東京証券取引所が大型の株式分割を自粛するよう企業に要請したこともあり、極端な株式分割は行われなくなっています。
株式分割以外の錬金術?投資対象となるさまざまなペーパーマネー
株式分割もひとつの「錬金術」だったわけですが、最近はいろいろなものが「証券化」されることで、新たな価値を創造しようとしています。
不動産の証券化もそうですし、面白いところでは「競走馬ファンド」や、アイドルを証券化した「アイドルファンド」なんていうものも登場しています。
資金を集める手段として、また、リスクを多数の投資家に分散させるという意味でも理にかなった面白い試みだと思います。
信用が紙切れを資産に変える
民法や商法では、財産権を表す証券のことを「有価証券」と定義しています。
私たちにとって、最も身近な有価証券は「紙幣」でしょう。
「紙切れ」が価値を持つのは、信用の裏付けがあるためです。
紙幣は正式には「日本銀行券」といい、日本政府の信用を裏付けに日本銀行が発行する有価証券です。
株券の場合は、発行企業の信用が裏付けになっていて、破綻すれば「紙切れ」に戻ってしまいます。
何があっても価値を保ち続ける金やダイヤモンドのような実物資産と違って、有価証券は不安定な投資対象とも考えられます。
証券化ですべてが有価証券となる
有価証券は、次のように分類されます。
- 貨幣証券=手形、小切手、銀行券など
- 物品証券=船荷証券、貨物引換証など
- 資本証券=株券、債権など
一般的な投資対象となるのは、3の資本証券です。
金融商品取引法では「一般大衆の投資対象となり、かつ市場性を持ち、大量の取引ができるもの」と有価証券を定義しています。
具体的には、株券のほかに、国債、地方債などの債権、投資信託、貸付信託などの受益信託があります。
投資対象としての有価証券の魅力は、持ち運びがしやすく、管理の手間がかからない点です。
最近では、実質資産である金や銀行が貸し付けた住宅ローンも証券化されています。
不動産を有価証券として投資できるようにしたREIT(リート)は、10万円程度で不動産投資ができると人気を集めています。