僕の仕事はトレーダー兼ファイナンシャルプランナーなわけですが、トレーダーの立場から言うと、ファンダメンタルズは無視してかまわないと思っています。
というよりも、「チャートだけを見るべき」といった方が正しいでしょう。
企業の決算発表で明らかになった数字を見ても、受け取り方は人それぞれなので、「自分の意見」を勝手に市場に持ち込むと、マーケットと嚙み合わないトレードをしがちになります。
一方、ファイナンシャルプランナーの立場で長期的な株式投資のアドバイスをするとしたら、ファンダメンタルズがダンゼン重要になってきます。
株価というものは、長期的には企業業績に収れんする
という、株式市場の「鉄則」があるからです。
✅この記事でわかること
ファンダメンタルズ分析で、企業の「いま」と「将来」を読む
株式投資で収益を上げるには、「安いときに買って、高いときに売る」のが基本です。
現在の株価がどの程度の水準にあるのかを分析する手法は、大きく2つあります。
ひとつは投資する企業の財務状況から株価を判断する方法で、「ファンダメンタルズ分析」といいます。
PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などの株価指標を使って、現在の株価が割安なのか、上がりすぎているのかを判断します。
とはいえ、財務諸表だけを読んでいても、正確な判断はできません。
新商品の開発や業界動向などを分析しながら、今後の収益を予想していくことが大切です。
証券会社に所属しているアナリストは、経営者へのインタビューも欠かせない材料のひとつです。
経営理念や企業風土は収益を動かす鍵となるからです。
EPS(1株当たり利益)ってどんな指標なの?
企業の成長力を判断するのに最も簡単な指標
1株に対する純利益がどれぐらいあるか
EPS(Earning Per Share )は、「1株当たり利益」という意味で、「1株益」ともいいます。
その名のとおり、会社が1年間に上げることができた利益(当期純利益)を、発行済み株式数で割ったものです。
1株に対する純利益がどれぐらいあるかを表し、次の式で計算します。
- EPS=当期純利益÷発行済み株式数
「当期純利益」とは、コストや法人税などを支払ったあとの最終的な利益のことです。
株価は将来の利益を織り込んでいくため、今後の「当期純利益予想」が使われることもあります。
また、この計算で使われる発行済み株式数とは、普通株式の期中平均株式数です。
株価指標を使って割安度を判断する
株の値段は、需要と供給(需給)のバランスで決まります。
買いたい人が多いと値段は上がり、売りたい人が多いと下がります。
現在の株価が経営実態に比べて割安なのか、高くなりすぎているのかを知るためには、「株価指標」を見るのが有効です。
株価指標の基本は、EPS(1株当たり利益)です。
当期純利益を発行済み株式数で割って計算します。
企業の収益力を見るには、当期純利益(税引後利益ともいう)を見るのが基本です。
当期純利益が着実に伸びていれば、「成長している」と判断できます。
ただし、増資なので株数が変化するため、当期純利益だけを見ていては投資家にとっての収益性の変化はわかりません。
そこで登場するのがEPSです。
増資を行うと株数が増えるため、EPSは低くなります。
専門用語では「1株当たり収益が希薄化する」といいますが、たとえ企業自体が成長しても、「1株当たり利益」が減ったのでは投資家は損をしています。
EPSが着実に伸びている企業を選ぶ
株の情報をまとめた「会社四季報」(東洋経済新聞社)などには、当期だけでなく、過去4~5年分のEPSも掲載されています。
EPSが着実に増えている企業なら、株主にとってもメリット大です。
株価の上昇も期待できそうです。
EPSはPER、ROEなど、さまざまな株価指標の計算にも使われます。
企業を見るときには、「1株当たり」の数字で判断する習慣をつけておきましょう。
PER(株価収益率)とは
株価と利益の関係から割安度を探る
株価が1株当たり利益の何倍まで買われているか
PER(Price Earnings Ratio)は、「株価収益率」のことです。PBRと並んで、多くの投資家が「現在の株価が割安か割高か」を判断する指標として使っています。
PERの単位は倍率で、計算式は次のようになります。
- PER(倍)=株価÷EPS(1株当たり利益)
現在の株価は利益の何年分?
数ある株価指標の中で、広く使われているのが「PER」です。
株価を1株当たり利益(EPS)で割ったもので、「株価収益率」と訳されます。
株価が1000円で1株当たり利益(EPS)が100円なら、PERは10倍です。
現在の株価は、10年分の利益に当たることがわかります。
日本株の平均的なPERは15倍前後となっています。
ただし、業種によって差が大きく、なかには50倍という銘柄もあるため、一概に15倍以下なら割安というわけにはいきません。
収益構造が似ている同業他社と比較して、判断することが大切です。
株価が上がるとPERは高くなる
PERを動かす要素は、株価と利益です。
計算式を見ればわかるように、利益が変わらない状態で株価が上昇すると、PERは高くなります。
すると「すでに割高」と判断する投資家がふえ、株は売られていきます。
判断に迷うのは、株価を追いかけるように利益が増えているケースです。
株価が「1000円 → 2000円」と2倍に上昇しても、利益が2倍になっていればPERは10倍のままです。
PERの高さは、将来の収益に対する期待の大きさとも考えられます。
そのため成長が期待できる「グロース銘柄」は、PERが高めにになる傾向があります。
PERの低い銘柄(低PER銘柄、テイパー銘柄などという)から選んで投資するときには、それが割安なのか、投資家から見捨てられた状態なのかを判断することが大切です。
PBR(株価純資産倍率)とは
企業の解散価値も投資判断の材料になる
1株当たりの純資産に対して何倍まで買われているか
PBR(Price Book-value Ratio)は、「株価純資産倍率」のことです。
これもPERと同様に、割安の度合いを判断する指標で、単位は倍率で表し、次のように計算します。
- PBR=株価÷1株当たり純資産
PBRは「1株当たりの純資産に対し、何倍までかわれているか(値がついているか)を示します。
PBRが低ければ低いほど、「株価が割安である」といえます。
PBR1倍割れは超割安の状態
PER同様、株価指標の中でよく使われるのがPBRです。
株価を「1株当たりの純資産」(BPS)で割ったもので、「株価純資産倍率」と訳されます。
純資産とは、企業の資産から借金を引いた残りのことです。
返済する必要のないお金で、自己資本ともいいます。
たとえ企業が清算されても純資産は残るため、会計士の「解散価値」と同じになります。
株価が900円で1株当たり純資産が100円の株の場合、PBRは0.9倍になります。
この時点で企業を解散すると、1株当たり1000円の資産が分配される計算になります。
実際には純資産のすべてを現金化して株主に配ることは不可能ですが、このような「PBR1株割れ銘柄」は、割安株の代名詞として使われます。
含み資産はPBRに反映されない
PBRの計算に使われる純資産は、帳簿上の数字が使われます。
時価が数千億円に及ぶ土地も、数千万円だった取得時の価格のまま計上されているケースがあります。
帳簿上の価値と時価の差を「含み資産」といいます。
かつて村上ファンドが阪神鉄道の大株主なったのは、阪神電鉄が保有する含み資産たっぷりの土地が狙いだったといわれています。
バブル期には、含み資産を計上に入れた「Qレシオ」という指標が使われました。
PBRより分母が大きいので、当然ながら倍率が小さくなります。
「まだまだ割安」と解釈するために使われました。
Qレシオはバブル崩壊で姿を消しましたが、地価高騰時には含みに着目する投資家が増えています。
ROE(株主資本利益率)ってどんな指標なの?
資本を有効活用しているか判断できる
株主からみた経営効率を示す
同額の利益を出している会社でも、元手1億円で1000万円稼ぐ会社と、元手2000万円で1000万円稼ぐ会社とでは、経営の効率性が異なります。
投資先として考えるなら、当然、少ない元手で大きな利益を稼ぎ出す会社の方がふさわしいでしょう。
この判断基準となる指標が、「ROE」です。
ROEは、「株主から預かったお金でそれだけ利益を出せているか」を計ります。
ROE(Return on Equity)は、「株主資本利益率(自己資本利益率)」のことです。
株主資本(会社の自己資本)に対する当期純利益の割合を表し、次のように計算します。
- ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
基本的には、ROEが高い会社ほど、効率的に経営できていることになります。
また、優良企業の水準は、10~20%程度とされています。
海外の投資家はROEを重視する
株主から預かった資本をどれだけ効率的に活用しているかを計る指標が、ROEです。
「株主資本利益率」と訳され、当期純利益を株主資本で割ります。
株主資本とは、資本のうち株主の出資によるものです。
ROEが高いほど、株主資本を効率的に活用しているといえます。
せっかく投資するなら、より多くの利益を稼いでくれる企業を選びたいものです。
外国人投資家は、ROE重視で投資判断を行う傾向があります。
自社株買いでROEが改善する
企業も、中長期目標にROEの改善を掲げるケースが多くなっています。
ROEを高くするには、
- 当期純利益(税引後利益)を増やす
- 株主資本を減らす
の2つの方法があります。
株主資本を減らすための手段として使われているのが「自社株買い」です。
市場から買い取った株式は株主資本から除かれるため、ROEの改善に直結します。
株数を増やす増資を避け、銀行融資による資金調達を増やすのも効果的です。
成長産業のROEは低い?
「ROEが高い企業=優良企業」とは限りません。
設備投資に積極的な企業は内部留保のキャッシュが多くなり、ROEが低下しがちです。
積極的に市場から資金調達をする企業も、ROEは低くなります。
金利が上昇し始めた現在では、銀行融資が多い企業は金利負担が足かせになる可能性があります。
ROEだけではなく、数字の意味を考えて見ることが大切です。
「配当利回り」ってなんだろう
インカムゲインを狙うなら配当利回りが重要
株主への利益還元度がわかる
配当とは、収益の一部を株主に還元することです。
1年間に受け取る配当金額を株価で割った数字を「配当利回り」といいます。
- 配当利回り=配当÷株価×100
株価が1000円、配当が10円なら、配当利回りは1%になります
同じ10円の配当でも、株価が500円のときに購入すれば配当利回りは2%に上昇します。
じっくり株を保有して配当益(インカムゲイン)を狙うなら、配当利回りを必ずチェックしましょう。
配当利回りは国債利回りより高いのが当然とされています。
リスクのある株に資金を投じるので、リスクに見合ったリターンが得られないと投資する人がいなくなるからです。
とはいえ、譲渡益(キャピタルゲイン)狙いの投資家が主流の日本の株式市場は、世界的に見ると配当利回りが低くなっています。
株価が下がると配当利回りが上昇する
日本では、収益状況にかかわらず安定的な配当を出す企業がほとんどです。
東証一部上場銘柄の平均配当利回りは、1.56%(2015年12月現在)。
リーマンショックで株価が低迷していた時期には2%台後半でしたが、アベノミクスによる株価の上昇で、配当利回りが低下しています。
それでも預金金利に比べれば、はるかに高利回りです。
景気が回復すれば、業績アップによる増配も期待できます。
前期より配当金を増やす「増配」は、株価上昇に直結します。
「増収→増配→株価上昇」となるのは、投資家にとって理想的なパターンです。
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