証券会社の役割

証券会社の業務【ブローカー・ディーラー・アンダーライター】など

証券会社のさまざまな業務

僕たちが普段使っている証券会社の業務は、株の売買の仲介(ブローカー業務)だけではないんです。
他にも、企業が新規に株を発行する際に、それを証券会社がいったん引き取ってから販売する引受業務(アンダーライター業務)や、株などの売買を通じて自ら利益を目指す自己売買(ディーラー業務)などがあります。

証券会社はかつては免許制でしたが、1998年の金融改革(金融ビッグバン)で登録制に変わりました。
以後、銀行やメーカーなどの異業種が証券子会社を作るケースが増える一方、ネット専業証券会社も登場しました。
既存の証券会社も法人向けの証券会社を設立するなど、ひとくちに証券会社といっても性格は会社ごとに異なります。

証券会社の業務は、注文を取り次ぐブローカー業務など大きく4つに分かれる

証券会社の業務は、注文を取り次ぐブローカー業務など大きく4つに分かれる

証券会社の業務は、大きく分けて「ブローカー業務」「アンダーライター業務」「セリング業務」「ディーラー業務」の4つがあります。

  1. ブローカー業務:投資家から委託を受けて株の売買の仲介をする
  2. アンダーライター業務:企業が発行した株や債券を買取ったあと投資家に販売する
  3. セリング業務:発行体からの委託を受けて販売だけを担当する
  4. ディーラー業務:利益を狙って自社で行う株などの売買

ブローカー業務【取引所に注文を取り次ぐ】

個人投資家にとって身近なのは、「ブローカー業務」(委託売買です)。

証券取引所で売買に参加できるのは、証券取引所に加入している証券会社に限られます。
個人投資家はもちろん、企業も、銀行、生命保険会社など機関投資家の取引も、すべて証券会社を通じて行われます。
そういった投資家からの委託を受けて、代理で売買する業務がブローカー業務です。

ブローカー業務によって発生する売買手数料は、証券会社の大きな収入源になっています。
かつては大蔵省(現財務省)が売買委託手数料を定めていましたが、金融ビッグバンにより自由化されました。
それをきっかけに、売買手数料の価格破壊が起こり、最低2500円だった売買委託手数料が、あっという間に数百円まで下がりました。

アンダーライター業務【新株を引き受ける】

企業が発行した株式や債券は、まず証券会社がすべてを買い取り、その後投資家に販売されます。
いったん引き受けることを、「引受業務」または「アンダーライター(アンダーライティング)業務」といいます。

引き受けた株は、当然ながら投資家に販売しますが、売れ残った場合は証券会社自身が抱え込むことになります。
そのため引き受けてもらう企業は、証券会社に手数料を支払います。

セリング業務【委託を受けて販売する】

発行体の委託を受けて、販売だけを担当するのが「セリング業務」です。「ディストリビューター業務」ともいいます。
発行済の有価証券の販売は「売り出し」、新規のものは「募集」と呼び方が違いますが、いずれの場合も売れ残ったら発行体に返品されます。

ディーラー業務【自ら株などを売買する】

顧客の売買を取り次ぐ以外に、証券会社自身もプレイヤーとして株式の売買を行います。
これを「自己売買」または「ディーラー業務」といいます。
担当する社員は「ディーラー」と呼ばれます。

ひとくちにディーラーといっても、株式のディーラーと、債権や為替のディーラーとでは役割が異なります。
債権や為替のディーラーは、会社の資金を使って売買を行う投資のプロです。
1日で億単位の収益を腕の持ち主とあって、億単位の年収を手にする人もいるようです。

株式の自己売買は、顧客の注文を円滑にこなすために行われる取引とと位置づけられます。
機関投資家の注文は、数百億円単位の取引になることが珍しくありません。
大量の売り注文をそのまま出したのでは、株価は一気に下がってしまいます。
そこで同じ証券会社のディーラー(自己売買)部門が買い注文を出すことでバランスをとるのです。

バブル期までは株のディーラーも会社の利益のために売買を行っていました。
当時の感覚では、自己売買で株価を吊り上げたり、相場を作り出すのも仕事のうちでした。
顧客の儲けよりも自社の儲けを優先させる取引も行われていました。

現在では株価操作につながるような自己売買には、さまざまな規制が設けられています。



規制緩和により証券会社の形が変わり始めている

「法人向け証券」と「リテール向け証券」の違い

存在感を増す投資銀行

間接金融から直接金融へ変わったことで登場したのが「投資銀行」(Investment Bank)です。
債権や新株の発行による資金調達、資産の証券化による流動化、さらにはM&Aをも含めた財務全般のアドバイスを行います。
銀行が資金を融資しているのに対して、投資銀行は資金調達のアドバイスやコーディネートが中心です。
銀行というよりも証券会社に近いイメージです。

日本では大手証券会社が新株発行や起債のコーディネートを行ってきました。
しかしバブル崩壊後、証券化やM&Aアドバイザーの役割を担ったのは「元祖投資銀行」といわれるゴールドマンサックスやモルガンスタンレーなど、米国系の投資銀行です。

花形的存在だった投資銀行ですが、サブプライム問題で一転して窮地に立たされます。
アメリカの五大投資銀行のうちベアスターンズとリーマンブラザーズは破綻し、メリルリンチは買収されました。
残ったゴールドマンサックスもモルガンスタンレーも一般の銀行にかたちを変えて業務を続けています。

ネット証券が一般化

個人投資家の約7割がインターネット経由で株の売買をおこなっているいま、立派な店舗を構えた証券会社は時代遅れとなっています。

大手証券会社もネット取引を扱っていますが、人気は安い手数料で勝負をかけるネット証券です。
なかでも専業6社といわれるSBI証券、マネックス証券、楽天証券、松井証券、GMOクリック証券、カブドットコム証券は、アベノミクスによる株価の回復で扱い高が急増しています。
株式に加えて、投資信託や外国債券などの品揃えも充実しています。

証券仲介業者が増えている

ネットで金融商品を購入するのは不安だという投資家の受け皿となりつつあるのが、「証券仲介業」です。
2004年の法改正で導入された証券仲介業は、金融機関以外の企業や個人にも金融商品を販売する道を開きました。
税理士事務所やファイナンシャルプランナー(FP)などが投資信託などの販売を手がける(証券外務員の有資格者のみ可能)など、仲介業者は証券会社に代わって身近なアドバイザーとして活躍しています。

証券仲介業者とは、証券会社と業務委託を結んだ企業や個人を指します。
扱える商品は、契約を結んだ証券会社が委託する商品のみです。
購入代金は顧客から直接証券会社の口座に入金し、仲介業者は証券会社から一定のコミッション(手数料)を受け取るかたちになります。
担当者は証券外務員資格の取得を義務づけられているため、証券会社の店頭と同じレベルの説明が期待できます。


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