発行市場と流通市場の機能を併せ持つ
2つの機能を持つ証券取引所
企業が証券取引所に上場する最大のメリットは、マーケット(市場)を通じて資金が調達できる点です。
証券取引所が資金調達の場としての役割を担っています。
新たに株式を発行してマーケットで売却すれば、その代金は企業のものとなります。
大量の株式を売却するには、マーケットが不可欠です。
新たな有価証券(株券や債権など)で、投資家を募集する場を「発行市場」といいます。
これに対して、すでに発行された有価証券の売買を行う場所を「流通市場」といいます。
このように、証券取引所には、発行市場と流通市場の2つの顔があります。
上場する企業の審査は取引所の役目
投資家が安心して取引するためには、対象となる企業への信頼性が欠かせません。
企業にとっての証券取引所デビューとなる「上場」にあたては、証券取引所による審査が行われます。
「上場株式○株以上、株主○人以上」といった上場基準が取引所ごとに設けられており、クリアできた企業だけが上場できます。
ただし、同じ東京証券取引所でも、一部市場と二部市場とでは違いがあります。
上場基準の厳しい一部へ上場することは、大企業の証といえます。
投資家保護の立場から、上場企業に情報の適時開示を義務付けたり、財務内容を正確に公表しないなど上場企業としての義務を怠った企業を処分したり、経営が悪化した企業に上場廃止の処分をするのも、証券取引所の仕事です。
また、インサイダー取引や株価操作などの不正取引を調査したり、問題のある取引について処分や注意喚起などの措置をとったりしています。
株取引のマーケットは全国に4ヶ所ある
世界の投資家から注目される東京証券取引所
株は、東京、名古屋、福岡、札幌の国内に4か所ある証券取引所の株式市場で売買されています(大阪は2013年よりデリバティブに特化)。
上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)などの取引もできます。
株の取引は、野菜や鮮魚のように売買されるのではなく、電子化されているので現在、株券は発行されていません。
取引も人手ではなく、すべてコンピューターで処理されます。
投資家が、証券取引所に直接、株の売買注文を出すことはできません。
注文は証券取引所に会員権を持つ証券会社を通じて行います。
注文を出すには、証券会社に口座が必要になります。証券会社は金融商品取引法に定められた第一種金融商品取引業者で金融庁に登録されています。
証券取引は取引所が開いている時間内で行われますが、法律の改正で夜間も PTS (私設取引システム)取引ができるようになり、主に夜間取引に利用されています。
日本を代表する証券取引所といえば、東京証券取引所です。
日本の株取引の8割を担い、海外からも「トウキョウマーケット」として注目されています。
東京証券取引所は「東証」と略されるほか、地名をとって「兜町」とも呼ばれます。
東京日本橋の隣接する兜町は、証券会社や投資顧問業者が密集するエリアとして賑わってきました。
しかし、オンライン取引をきっかけに、兜町離れが進んでいます。
丸の内エリアに金融機関を集中させる「丸の内金融マーケット構想」が実現すれば、兜町の名も消えてしまうかもしれません。
名古屋証券取引所は「名証」または「伊勢町」と呼ばれ、大阪取引所は「大証」または「北浜」と呼ばれています。
世界の証券取引所も目が離せない
経済がグローバル化したことで、世界各地のマーケットが連動した動きを見せるようになっています。
アメリカを代表する証券取引所であるニューヨーク証券取引所や、ハイテク企業が数多く上場するナスダック証券取引所の動きは日本の株価に大きく影響を及ぼします。
世界の主要な株式市場は、ニューヨーク、ロンドン、日本、中国、シンガポールなどがあります。
日本の株式市場は、かつてはアメリカに次ぐ規模でしたが、中国の3市場(上海、香港、深圳)の台頭や各国の証券取引所が次々と国境を越えて合併し、その都度順位が変わっています。
各国の証券取引所が競うように合併・買収を繰り返す背景には、同じ国の証券取引所同士でも上場企業の奪い合いや金融商品、デリバティブ市場などクロスボーダー取引と呼ばれる国境を越えた取引への投資家のニーズが高まっているためです。
投資家のニーズに応えることで、さらに多くの投資家を呼び込み、手数料収入が増えることで、証券取引所は、さらに競争力を高めるための買収や投資資金を得ることができます。